80年代と言えば、ルーズなシルエットのスーツが象徴的でした。しかし、その流行は何から生まれ、どうして終焉を迎えたのでしょうか。その答えを探す時間旅行に、ごいっしょ出かけてみませんか。

この記事の内容
・80年代ファッションとは
・なぜ特徴的なファッションが生まれたのか?
・現代に息づいているものとは?
80年代ファッションの概要
日本の80年代ファッション
80年代の日本のファッションには以下のような特徴がありました:
- ボディコンファッション: 80年代には、ボディコンファッションと呼ばれるシルエットのタイトな服が流行しました。これは女性の自己主張や解放を目指すファッションの一つであり、特にバブル期以降に人気となりました。
- カラス族: 80年代の日本では、「カラス族」と呼ばれるスタイルが流行しました。これは全身を真っ黒なアイテムでコーディネートするスタイルであり、個性的でインパクトのあるファッションが特徴でした。
- デザイナーズ&キャラクターズブランド: 80年代の日本では、デザイナーズ&キャラクターズブランドが人気となりました。様々なDCブランドが流行し、個性や少数派が好まれる傾向がありました。
- ヨーロピアンなテイスト: 80年代の日本のファッションには、ヨーロピアンなテイストが取り入れられました。パリを中心としたヨーロッパのスタイルが影響を与え、JUNやエドワーズなどのブランドが牽引しました。
- アイビー・リーグの影響: 80年代の日本では、アメリカのアイビー・リーグのファッションがカウンターカルチャーとして人気となりました。アイビールックと呼ばれるスタイルは、カジュアルながらも格好良さを追求し、着崩したりカラフルなアイテムを組み合わせたりする特徴がありました。
海外の80年代ファッション
アメリカの80年代ファッション
アメリカの1980年代のファッションの特徴:
- 実用性と美学: 1980年代のアメリカでは、ファッション選びにおいて実用性と美学が同等に考慮されました。衣服の色はしばしば落ち着いた、静かな、基本的な色が選ばれました。
- パワースーツ: 1980年代のアメリカでは、大きくオーバーサイズの肩と強い対照的な色が特徴のパワースーツが台頭しました。これらのスーツは、権威と自信を示すためにオフィス環境でよく着用されました。
- 大胆なプリントと色: この十年間は大胆なプリントと鮮やかな色が人気となりました。ネオン色、アニマルプリント、デニム・オン・デニムのルックは、ファンキーでエッジの効いたスタイルを求める人々に好まれた選択肢でした。
- カジュアルでハイウエストのジーンズ: カジュアルな衣服、特にハイウエストのジーンズが1980年代に人気を博しました。ラルフローレンやカルバンクラインのようなブランドは、カジュアルウェアへの関心の高まりを利用しました。
- アクセサリー: 1980年代はアクセサリーが一般大衆によりアクセス可能になった転換点でした。ブランドのバケットハット、眼鏡、ゴールドチェーン、色付きまたはミラーレンズのサングラスが流行しました。
ヨーロッパの80年代ファッション
ヨーロッパの1980年代のファッションの特徴:
- ニュールック: 1980年代のヨーロッパのファッションシーンは、クリスチャンディオールのニュールックに影響を受けました。これは、柔らかく丸みを帯びた肩のライン、絞り込まれたウエスト、フレアスカートが特徴でした。
- レトロプリントとヴィンテージアイテム: レトロプリントとヴィンテージアイテムは、1980年代のヨーロッパのファッションで人気でした。大胆なプリント、ボリューミーな髪、ネオン色、デニム・オン・デニムのルック、アニマルプリントが取り入れられ、エクレクティックで表現力豊かなスタイルが作られました。
- アイビースタイル: アメリカの大学のアイビーリーグスタイルがヨーロッパで人気を博しました。アイビースタイルは、クラシックでエレガントな要素をスポーティーなタッチと組み合わせ、ブレザーやボタンダウンシャツ、膝丈スカートなどのアイテムを特徴としました。
- パンクファッション: パンクファッションは、1980年代のヨーロッパでサブカルチャーとして登場しました。それは、黒い衣服、レザージャケット、アニマルプリント、バンドTシャツなどの要素を取り入れ、反体制と反逆の態度を反映していました。
80年代のファッションとスーツの特徴
80年代、ファッション界は「大胆なスタイル」の時代でした。その特徴的なスタイルの1つが、ぶかぶかのスーツでした。この流行は、ポップカルチャーやパワードレッシングの影響、そしてメンズファッションの変化から生まれました。
ポップカルチャーの影響とスーツのシルエット
80年代は音楽やMTVの黄金時代でもありました。ロックバンドのDavid Byrne(トーキング・ヘッズ)のようなアーティストが象徴的な存在でした。ポップカルチャーのアイコンたちが着用していたブカブカのスーツは、スタイリッシュかつ斬新な印象を与えました。
パワードレッシングとスーツの象徴性
80年代は、女性の社会進出が進み、女性たちがパワフルなビジネスウーマンとして存在感を示す時代でもありました。この背景から、パワードレッシングが流行し、男性のスーツも力強く見せることが求められました。ルーズなスタイルのスーツは、自信と権威を象徴するアイテムとなりました。
メンズファッションの変化とスーツのルーズなスタイル
80年代には、メンズファッション全体が大きな変化を遂げました。従来のタイトなスーツに代わり、ルーズなシルエットが主流となりました。この変化は、カジュアルさや快適さを追求する若者たちの要望に応えた結果であり、大きなトレンドとなりました。
パワードレッシングとは?
パワードレッシングとは、主に1980年代にビジネスシーンで見られたドレッシングスタイルで、力強さや自信、リーダーシップを表現するための衣装です。特に女性においては、男性主導のビジネス界での存在感を示すための手段として用いられました。
具体的なアイテムとしては、大きな肩パッドを持つジャケットや、ストレートラインのスカート、シルクのブラウス、名刺入れやブリーフケースといったアクセサリーなどが挙げられます。これらの服装は、一見男性的で堅苦しく見えるかもしれませんが、それはビジネスという「戦場」で自分を強く見せ、存在感を発揮するための戦略です。
例えば、1980年代の人気テレビドラマ「ダイナスティ」の主人公であるアレクシス・キャリントン(ジョーン・コリンズ演じる)は、パワードレッシングの代表的なキャラクターとされています。彼女はビジネスシーンで力強く、自信に満ちたスタイルを見せ、大胆な肩パッドや派手なアクセサリーを用いたスーツで視聴者を魅了しました。
このように、パワードレッシングは80年代の社会背景、特に女性の社会進出を反映したファッションの一つであり、その影響は現代のビジネスウェアにも引き継がれています。
80年代をふりかえってみると?
それでは80年代とはどんな時代だったのでしょうか。世界全体の動きに目を向けてみましょう。
80年代におこった大きな政治的経済的事件を5つ挙げます:
- ベルリンの壁崩壊 (1989): 1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツの統一が実現しました。これは冷戦の象徴的な出来事であり、東西の経済・政治的な統合をもたらしました。
- イラン・イラク戦争 (1980-1988): 1980年から1988年まで続いたイラン・イラク戦争は、中東地域の政治情勢に大きな影響を与えました。この戦争は石油価格の上昇や地域の不安定化をもたらし、世界経済にも影響を及ぼしました。
- レーガノミクス (1981-1989): アメリカのロナルド・レーガン大統領が推進した経済政策であるレーガノミクスは、減税や規制緩和を中心とした政策でした。これによりアメリカ経済は成長し、新自由主義経済の台頭を促しました。
- チェルノブイリ原子力発電所事故 (1986): ソビエト連邦(現在のウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で発生した事故は、世界最悪の原子力事故となりました。この事故は環境への影響や原子力発電に対する懸念を引き起こし、エネルギー政策にも影響を与えました5。
- アフガニスタン侵攻 (1979-1989): ソビエト連邦によるアフガニスタンへの侵攻は、冷戦時代の緊張を高めました。この侵攻はアフガニスタン内戦を引き起こし、国際的な政治情勢や経済情勢にも影響を与えました。
これらは80年代におこった大きな政治的経済的事件の一部です。これらの出来事は世界の政治経済情勢に大きな影響を与えました。また日本では80年代と共に昭和が終わり平成の時代となりました。80年代は歴史の流れが大きく変わった変化の時代でありこれが個人の生活にも大きな影響を与えたのです。
80年代ファッションをふりかえると?
80年代の世界のファッションの動きをまとめると以下のようになります:
- 大胆なスタイルと明るい色使い: 80年代は大胆なスタイルや明るい色使いが特徴でした。派手な柄や鮮やかなカラーが人気であり、目を引くシルエットやデザインが多く見られました。
- カウンターカルチャーの影響: 80年代はカウンターカルチャーがファッションに大きな影響を与えました。若者たちは先行する価値観を否定し、新しいスタイルを提案するような姿勢を示しました。ストリートファッションやパンクスタイルなどが注目され、個性的なスタイルが広まりました。
- レトロな柄とヴィンテージ: 80年代はレトロな柄やヴィンテージのアイテムが人気となりました。懐かしい柄やデザインが再び注目され、エクレクティックなスタイルが広まりました。
- ファッションの多様性: 80年代はさまざまなファッションのトレンドが存在しました。ヒップホップ、プレッピー、ワークアウト、ロック、パンクスタイルなど、さまざまなスタイルが流行しました。
- 地域ごとの特徴: 地域によってもファッションの特徴が異なりました。アメリカではカジュアルなスタイルやスポーツウェアの影響が強く、ヨーロッパでは高級ファッションやレトロなスタイルが注目されました。
これらは80年代の世界のファッションの一部です。80年代は多様なスタイルが存在し、大胆なスタイルや明るい色使いが特徴的でした。カウンターカルチャーやレトロな要素がファッションに影響を与え、個性的なスタイルが広まりました。
80年代のスーツブームの終焉と現代のスーツスタイルの変遷
しかし、スーツのブカブカスタイルは長くは続きませんでした。90年代以降、スリムフィットのスーツが再び人気を集め、スタイルの主流となりました。現代のスーツスタイルは、より体にフィットし、洗練されたシルエットを重視する傾向があります。

80年代のぶかぶかスーツは、当時のファッションやカルチャーの変遷、そして社会的な要請によって生まれた一時的な流行でした。それはファッション史における重要な節目であり、今日のスーツスタイルへの影響も大きかったのです。
現在のファッションに与えている影響
最後に80年代のスーツのデザインが現在のファッションに与えている影響についてまとめます。
80年代のスーツのデザインは、現在のファッションに以下のような影響を与えています:
- ソフトなシルエットの普及: 80年代には、ソフトなシルエットのスーツが主流となりました。これは、ジョルジオ・アルマーニなどのデザイナーが提案したソフトスーツスタイルが特徴でした。現在のファッションにおいても、ゆったりとしたシルエットやリラックス感のあるスーツが人気となっています。
- カジュアル化への影響: 80年代には、カジュアルなスタイルが広まりました。スーツのデザインもカジュアル化し、ビジネスシーンでもよりリラックスした雰囲気が求められるようになりました。現在のファッションでも、ビジネスカジュアルが一般的になり、スーツのデザインにもカジュアルな要素が取り入れられています。
- 色使いと柄の多様化: 80年代には、スーツの色使いや柄も多様化しました。明るい色や大胆な柄が人気となり、従来のシンプルなスーツから一歩踏み出したデザインが増えました。現在のファッションでも、スーツの色使いや柄において多様性が求められ、個性的なスタイルが広まっています。
- ヴィンテージの影響: 80年代のスーツデザインは、ヴィンテージファッションの一部としても人気があります。ヴィンテージのスーツは、その独特なデザインや素材の組み合わせが現代のファッションに影響を与えています。現在のファッションでも、ヴィンテージのスーツデザインが再評価され、トレンドとなっています。
これらの要素は、80年代のスーツデザインが現在のファッションに与えた影響の一部です。ソフトなシルエットやカジュアル化、色使いと柄の多様化、そしてヴィンテージの影響は、現代のスーツデザインにおいても重要な要素となっています。
終りに
80年代を振り返る旅はお楽しみいただけたでしょうか。意外なところで現代との共通点も発見できたとおもいます。この記事を読んで、80年代のスーツファッションがどれほどユニークで影響力があったかを理解していただけたでしょうか。80年代のスーツの魅力についての旅はここで一旦終わりですが、ファッションの歴史はまだまだ続きます。次回もお楽しみに!